1)緊急避妊ピルとは
・レボノルゲストレルという黄体ホルモン製剤(商品名:ノルレボ1.5㎎)になります。
・避妊しないでセックスをした、コンドームが破けた、ピルを飲み忘れたなど、「妊娠するかも」と思ったら、72時間以内に1回1錠飲むだけで、妊娠率を5%以下まで下げることが出来ます。
・副作用はほとんどなく、軽い吐き気などがある人がいる程度です(ノルレボ以前は、中用量ピルを計2回内服しなければいけなかったので、結構な頻度で吐気嘔吐がありました。内服直後に嘔吐すれば、当然避妊効果は下がります)。いわゆるピルと異なり、エストロゲンを含みませんので、血栓症のリスクがありません。ピルでは禁忌とされている、高度肥満、高血圧、喫煙者 でも内服可能です。
・健康保険は使えないので、施設によりますが1万~2万円くらいはかかります。
2)排卵後だと効果はない?
月経周期が規則的で、避妊失敗が排卵翌日だと思うんです。
排卵してしまっていたら、緊急避妊はもう意味が無いですか?
主な作用機序は排卵の予防・遅延(女性の体内での精子の寿命である72時間以降まで排卵を遅らせる)ですが、受精や着床の予防効果もあるので、意味はあると思います。ただし、排卵前よりは避妊効果は下がります。
また、排卵前であっても、避妊効果は100%ではありません。そして、ノルレボ内服後のsexで妊娠することももちろんあります。
・ノルレボ内服後も、次の月経がくるまではきちんと避妊をすること
・ノルレボ内服後3週間たっても月経がこない場合は、必ず市販の妊娠検査薬で確認すること
が重要です。
3)重要!内服までの時間と避妊効果
以下の通り、避妊失敗から内服までの時間が短いほど避妊効果は高いです。
ただし、72時間までならかなりの効果を見込める(失敗から72時間で内服しても、妊娠してしまう確率は4%にすぎない)ため、夜間休日は対応しない施設も多数あります。ので、診療時間外であれば、焦っていきなり受診するのではなく、まずはかかりつけ(なければ近くの婦人科)に対応(処方)可能かどうか、電話相談しましょう。
ネット検索では妊娠阻止率80%とか85%という記載が散見されますが、これはノルレボを飲んでも、100人中15~20人は妊娠してしまう、という意味ではありません(難しい説明になるのでここではその意味は割愛します)。
避妊失敗から内服までの時間 | 妊娠する確率 |
12時間以内 | 0.5% |
12~24時間 | 1.5% |
24~36時間 | 1.8% |
36~48時間 | 2.6% |
48~60時間 | 3.1% |
60~72時間 | 4.1% |
4)まとめ
・レボノルゲストレル(商品名:ノルレボ1.5㎎)を72時間以内に1回1錠飲むだけで、妊娠率を5%以下まで下げることが可能。
・保険が効かないので、施設によるが1~2万円程度はかかる。
・避妊失敗から内服までの時間が短いほど避妊効果は高い。が、72時間後の内服でも、妊娠の確率は4%にすぎない。
・効果(成功率)は100%ではないため、ノルレボ内服から3週間たってもきちんとした月経が無かったり、妊娠を疑うような体調変化がある時は、市販の妊娠検査薬が必要。
・緊急避妊の効果があるのは、失敗したsex1回に対してのみ。緊急避妊後に同様の行為があった場合は無意味になる。
・緊急避妊が複数回必要になるような場合は、ピルやIUD、IUS(商品名ミレーナ)等、より確実な方法での避妊が望ましい。
・コンドームは避妊効果は高くないが、性病予防には有効。
産婦人科医 まさ
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