ピルは危険? ~ 飲めない人とその理由 ~

喫煙女性 婦人科
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ピルが、月経のほぼ全てのトラブルを改善してくれる素晴らしい薬であることは以下で説明しました。

低用量ピル ~生理のトラブルバスター~ – 産婦人科医まさ のブログ (hi-blog-happydays.com)

また、飲み忘れが無ければ、避妊効果も非常に高いです。

 

 

しかし、ピルに限らず、どんな薬でも一定の確率で副作用が起こります。

内服できない人と、その理由となる副作用、などを説明したいと思います。

1)絶対飲めない人・飲んでもいいけど注意が必要な人

日本産婦人科学会が作る、ピルのガイドラインには、以下の様に記載されています。

絶対ダメ 飲んでもいいけど要注意
年齢 50歳以上、初潮前、閉経後(50歳未満であっても) 40歳以上
肥満 BMI30以上
喫煙 35歳以上、かつ、15本/日以上 左記以外の喫煙者。特に15本/日未満でも、35歳以上は要注意
血圧 上が160以上、下が100以上。

の、どちらか一方でも満たす場合

上が140~159、下が90~99。

の、どちらか一方でも満たす場合

糖尿病 腎臓や眼などに血管病変あり 血管病変なし
妊娠 妊娠中・妊娠の可能性
産後(授乳なし) 産後3~4週以内
産後(授乳あり) 産後6か月以内
手術等 ・術前4週間 ・術後2週間

・長期間安静が必要な状況

片頭痛 前兆(閃輝暗点・星型閃光など)あり 前兆なし
乳癌 乳癌 ・5年以上再発のない乳癌既往

・家族歴

血栓 ・血栓の既往

・抗リン脂質抗体症候群

・血栓を作りやすい家系
その他 ・重度の肝機能障害

・原因不明の不正性器出血あり

・てんかん

・腎機能障害

・クローン病、潰瘍性大腸炎

2)主な副作用

(1)吐気・嘔吐・乳房緊満感
妊娠初期と似たホルモンバランスになるためです。軽いつわりと考えてください。

(2)むくみ・体重増加

ひどいむくみは体重増加につながる場合があります。また、食欲が増す場合もあるので、更に体重が増える場合があります。巷で「ピルは太る」と言われるのは、こういう人がいるからだと思います。

ただし、統計学的にはそのような医学的根拠(エビデンス)はありません。

(3)血栓症

頻度はとても低いですが一番怖い副作用ですので、3)で詳しく説明します。

 

など。

たいていは2~3か月で落ち着いてくるため、始めるときには皆さんに「よほど強い副作用でなければ、だんだん落ち着いてくるので3か月は飲んでみましょう」とお話ししています。

また、ピルは種類がたくさんあるので、副作用が強い時は、やめるのではなく別の種類に変えてみるのも有効な方法です。欧米には「ピルはジーンズを選ぶ様に、自分に合うものを選ぶ」という言葉があります。1種類しか試してないのに「私には合わないからやめる」というのは、とてももったいないと思います(実際にそういう方はたくさんいらっしゃいます)。

3)血栓症 ~頻度はとても低いけれど、起こると危険~

血管の中で血が固まってしまう病気です。大きいものだと血管を詰まらせてしまい、頭なら脳梗塞、心臓なら心筋梗塞、肺なら肺塞栓 の原因となります。

 

起こると(非常に)危険ですが、頻度はとても低いです。飲んでいない人と比べて2~3倍増えますが、それでも1年間で内服者の0.1%未満です。

 

ピルで命に関わる状況になる確率は、道路を歩いていて交通事故に巻き込まれてそういう状況になる確率よりも低い です。

だから、少し乱暴な言い方をすれば、「血栓が怖いからピルを飲まない」というのは、「交通事故が怖いから外出しない」と言っているのと同じ事なんですね。

 

また、以下の様に、妊娠中や産後の方が血栓のリスクはずっと高いです

でも、血栓が怖いから妊娠しない、という人はいませんよね。

 

1年間で、1万人のうちに静脈血栓塞栓症の起こる人数
ピル内服無し 1~5人
ピル内服あり 3~9人
妊娠中 5~20人
産後3か月以内 40~65人

 

とはいえ、起こると危険です。脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓 などが起こった場合は、最悪生命に関わります。

 そのため、血栓リスクが高い方は、どんなに希望しても処方しません。「月経のトラブルで死ぬことはないけど、血栓はすごく運が悪いと死にます」と説明します。

 患者さん用の携帯カードに、血栓症を疑う自覚症状の一覧が書いてありますので、常に持参して、普段ない症状がある時はそれに当てはまらないかどうかチェックしてください。

 特に内服開始から3か月間が、血栓ができやすい時期と言われており注意が必要です。

 脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓 は急変して意識がない状態で病院へ運ばれる事もある病気です。ピルを飲んでいるという情報は、これらの病気を早く疑う、これらの病気に早く気付くヒントになります。万一に備えて、ご家族や職場の親しい友人には、ピルを飲んでいることを伝えておくとbetterです。また、他科を受診する際は、必ずピルを内服していることを伝えましょう。

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4)頭痛があると飲めない?

ピルを内服する方は基本若い女性ですので、片頭痛もちの方も多いです。

 「前兆(=今から片頭痛が来るな、という前触れ症状)のある」片頭痛もちのかたは、脳梗塞のリスクが高くなるため処方できません。前兆のない片頭痛もちの方には、普通に処方できます。

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6)まとめ

◎ピルで太る、は統計学的にはウソ。ただし、むくみや食欲が増すことで、体重が増えてしまう人は一定数いる印象。

◎一番多いマイナートラブルは吐気。多くは2~3か月以内に落ち着く。落ち着かない場合はピルの種類を変えることで多くは解決する。

◎頻度はとても低いが一番怖い副作用は血栓症。最悪命にかかわる。

◎血栓リスクは、飲まない人の2倍。だが、年間0.1%以下。

◎血栓リスクは、ピル内服 < 妊娠 < 産後。

 

【ピルを処方できない主な理由】

・50歳以上 ・閉経後 ・35歳以上&15本/日以上の喫煙 ・重度の高血圧 

・前兆のある片頭痛 ・血栓の既往、抗リン脂質抗体症候群

 

・毎月の辛い症状が、高い確率で軽減するメリット

・年間1万人に数人で発生する、その中で更に運が悪いと生命に関わる状況になり得るデメリット

のどちらを選ぶのか。

 理性的な判断で一歩踏み出して、今後の人生をより快適に過ごしませんか?

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                           産婦人科医まさ

 

 

 

コメント

  1. […] […]

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