妊婦のインフルエンザ ~ワクチン・薬の安全性は?~ 

産科
著作:lookstudio/出典:Freepik

コロナ禍では、感染予防策によりインフルエンザの発生が激減していました。

しかし、マスク使用が徐々に緩和(適正化)されたり、入国制限が大幅に緩和されたり など、コロナとの付き合い方に大きな変化がみられるため、今年度以降はインフルエンザの流行が非常に懸念されています。

例年よく聞かれますが、今後は特に聞かれることが多くなりそうなので、妊娠中の

・インフルエンザワクチン

・インフルエンザ治療薬(タミフル、リレンザ など)

について説明したいと思います。

先に結論!

・妊婦は発症すると重症化しやすいし、妊娠経過に悪影響が及ぶ場合もあるため、「重症化予防効果」があるインフルエンザワクチンを接種することを強く勧めます。妊娠週数は問いません(妊娠の時期に関係なく投与可能です)。

 

・妊婦の感染予防目的に、同居家族へのワクチン接種も強く勧めます。

 

・感染した妊婦は、重症化予防のために速やか(発症から48時間以内)に投薬治療を行うことを勧めます。

 

 

1)妊娠とインフルエンザ

(1)妊娠がインフルエンザにおよぼす影響:妊婦は重症化しやすい

(2)インフルエンザが妊娠におよぼす影響:自然流産、早産、低出生体重児、胎児死亡が増える

そのため、ワクチンによる発症および重症化予防」適切な投薬による速やかな治療」 がとても大切です。

2)妊娠とインフルエンザワクチン

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 米国では、「妊婦へのインフルエンザワクチン接種は、インフルエンザの重症化予防に最も有効な手段であり、母体と胎児への危険性は妊娠全期間を通じて極めて低いとして、流行期間においては、妊娠期間に関係なく、全ての妊婦および妊娠予定の女性への不活化インフルエンザワクチンを推奨する」とされています。

 逆に、妊娠初期の(インフルエンザによる)高熱のため、出生時の先天異常(神経管閉鎖障害、心奇形など)が増える可能性も指摘されています。

 日本でも、上記の米国の方針に準じた方針で管理している施設がほとんどです。

 また、生後6か月未満の乳児に対するインフルエンザワクチン接種は認められていません。妊婦や授乳婦がワクチン接種で発症や重症化を予防することは、本人だけでなく乳児の発症予防というメリットにもなり得ます。

 ワクチンの効果は接種後2週間後から約5か月間、とされています。コロナ禍以前では、1月~3月が感染のピークとなるため、10~12月が理想的な接種時期とされていました。

 ワクチンの種類(メーカー)も特に問いません。防腐剤としてエチル水銀(チメロサール)を含む製品の胎児への影響が一時期問題視されましたが、濃度が極めて低いため、チメロサール含有ワクチンであっても差し支えないと考えられています。

3)妊娠とインフルエンザ治療薬

1)重症化率や死亡率を低下させるためには、症状出現後48時間以内の投薬治療開始が重要です。

2)薬の種類

 日本で使用できる抗インフルエンザウイルス薬には、タミフル(内服)、リレンザ(吸入)、イナビル(吸入)、ラピアクタ(点滴)、ゾフルーザ(内服) などがあります。これまでのところ、上記の薬剤は全て妊婦、胎児に大きな悪影響はないと考えられています。

 インフルエンザに限らず、古い薬であるほど、安全性に関しての「使用経験に基づいた」データが豊富になるため、米国ではタミフルが第一選択となります。

 しかし、流行しているウイルスの種類により薬の効きやすさ(耐性率)も違いますし、それぞれの薬の特性(例:イナビルは1回吸入のみの薬であるため、うまく吸入できないと十分な効果が得られない など)もあるため、どの薬剤を使用するかは担当医師とよく相談しましょう。

 

3)予防投薬

 全ての濃厚接触者に抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を行うのはやりすぎです。

 「妊婦、産後2週間以内の授乳婦」 に関しては、重症化予防のために、濃厚接触者となった場合は抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を行っても良いと考えられています。

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4)まとめ

 大切なのは以下の2点です。

①発症予防: ●引き続き感染予防策をしっかり講じる ●ワクチン投与(同居家族も)

②重症化予防: ●ワクチン投与 ●発症時の速やかな投薬治療

 

 適切な対応で、ご自身と赤ちゃんをリスクから守りましょう。

                            産婦人科医 まさ

 

 

 

 

 

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