HPVワクチン ~唯一のがんを予防できるワクチンです!!~

婦人科
著作者:vectorjuice/出典:Freepik

 子宮頸がんワクチン(以下HPVワクチン)の積極的勧奨が、2022年4月にようやく再開されました。2013年6月に中止されたので、約10年もかかりました。。

 しかし、マスコミの偏った報道で長期間中断されていたため、保護者の方からは未だに不安の声をよく聞きます。

 HPVワクチンは、現在世界の71カ国において女児に、11か国では男児に対しても国のプログラムとして接種が行われており、その安全性と有効性は強い根拠をもって多数証明されています。HPVワクチンを積極的に早くから投与してきた国では、既に子宮頸がんは撲滅できるかも、というレベルになってきています。

 また、日本でのHPVワクチン接種後の多様な症状の報告に関しても、慎重に検討がなされましたが、ワクチンとの因果関係は証明されていません。

 子宮頸がんは、ワクチンで予防できる唯一のがんです!!!

 子宮頸がんは別名マザーキラーと呼ばれ、若い女性の発症・死亡が多いのが特徴です(乳癌と子宮頸がんが、20代および30代女性のがん死亡の原因2トップです)。

 

妊娠や出産を諦めなければならない女性

愛する夫・小さな子供を残して亡くなる女性

このような患者さんやそのご家族・ご遺族を一人でも減らすために、多くの方に正しい知識が届いて欲しいと強く願います。

 こんな悲しい病気を防げるワクチンがあるのに、接種しないなんてもったいないです!!

 

 性交経験前の全ての日本人女性にHPVワクチンを投与することで、日本の子宮頸がんの6~7割は予防可能と考えられています。

 

・ただし、100%予防できるわけでは無いので

 ◎ワクチン:がんの予防

 ◎検診:早期に発見

2段構えでの対策が非常に重要です。

 

 

2023年4月追記 重要!

 これまで公費負担は2価または4価ワクチンのみでしたが、2023年4月1日から9価ワクチンも使用可能になりました!

 9価ワクチンは、カバーできるHPVの幅が広いため、性交経験前の全日本人女性に9価ワクチンを投与することで、日本の子宮頸がんの9割は予防可能と考えられています。

 しかも、これまでは半年間で計3回の接種が必要でしたが、9価ワクチンは(15歳未満で初回投与を済ませれば)2回接種で済むように変更されました。

 

ワクチンについて正確に知るためには、子宮頸がんそのものについての知識も必要です。

子宮頸がんについて詳しく知りたい方はコチラ

【HPVワクチンの予備知識】子宮頸がんとは – 産婦人科医まさ のブログ (hi-blog-happydays.com)

 

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1)子宮頸がんの原因ウイルスである、HPV(human papilloma virus:ヒトパピローマウイルス)とは

 性経験のある女性であれば50%以上が生涯で少なくとも一度は感染するとされている、一般的なウイルスです。100種類以上の型が発見されており、その中の一部が、子宮頸がん・膣がん・肛門がん・中咽頭がん などのがんや、尖圭コンジローマ等の良性疾患の発生に関わっています。

 がんとの関連が低い低リスク型と、がん化との関連が高い高リスク型HPV(16、18、31、33、35、45、52、58など十数種類の型)とに分けられます。

 

100種類以上!!

HPVと一言でいっても、たくさんの種類(型)があるんですね~。 

高リスクHPVに感染すると、必ずがんになるんですか?

 必ずがん化するわけではありません。たとえ感染しても、9割以上の方は2年以内に免疫力(自然治癒力)で自然に消失します。

 何らかの理由で、長期間(平均で10年以上の長い期間)持続感染することによって、異形成(前がん病変)を経て子宮頸がんに進行する”可能性”が出てきます。

 

 

2)HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)とは

 HPVは性交渉により感染しますので、性交経験が無いうちにHPVワクチンを接種することで、抗体を作ってHPVの感染を予防することが出来ます。現在世界の71カ国において女児に、11か国では男児に対しても国のプログラムとして接種が行われており、その安全性と有効性は強い根拠をもって多数証明されています。

 日本での高リスク型HPVの検出率から考えて、全女性に性交経験前に9価のHPVワクチンを投与できれば、日本の子宮頸がんの約9割は予防できる と考えられています。

 日本では、先進国としてはかなり遅れて2009年12月に承認され、2013年4月より定期接種となりました。しかし、接種後の多様な症状報告のために、わずか2か月後の2013年6月より自治体による積極的勧奨は差し控えられていましたが、2022年4月より自治体による積極的勧奨が再開しました。

3)公費負担での接種が可能なワクチン~現在は4価と2価の2種類~

 1)サーバリックス:HPV16型、18型 に対する2価ワクチン 

 2)ガーダシル:HPV16型、18型6型、11型 に対する4価ワクチン

  ・16型、18型子宮頸がんから最も高頻度に検出されるHPVの型

  ・6型、11型:尖圭コンジローマ(陰部に出来る良性のイボ)の主な原因となるHPVの型

 

 注)シルガード9(、ガーダシル9):HPV6、11、16、18、31、33、45、52、58型 に対する9価ワクチン

  ・31、33、45、52、58型:16型と18型の次に、子宮頸がんとの関連性が強いとされるHPV型

 国内使用は可能だが、2022年10月現在は定期接種(公費負担)への使用は不可能。2023年早期からの定期接種(公費負担)での使用に向けて調整中です。

 当然、9価→4価→2価 の順でおすすめです。

 

≪2023年4月 追記≫

2023年4月1日より、9価ワクチンも公費負担で使用可能となりました。しかも、これまでは半年間で計3回の接種が必要でしたが、9価ワクチンは(15歳未満で初回投与を済ませれば)半年で2回接種で済むように変更されました。

 

4)HPVワクチン投与の実際

(1)対象

 1)最も推奨:10~14歳

 2)次に推奨:15~26歳

 3)希望があれば接種:27~45歳

 4)対象外:46歳以上・妊婦

 

(2)投与方法

 1)サーバリックス:0,1,6か月後の計3回(例 1月、2月、7月)

 2)ガーダシル:0,2,6か月後の計3回(例 1月、3月、7月)

2023年2月追記

3)シルガード9:
0,2,6か月後の計3回(例 1月、3月、7月) または 0,6か月後の計2回(例 1月、7月)

 

5)キャッチアップ接種には意味がない?

 HPVは性交渉により感染しますので、性交渉経験が無いうちにHPVワクチンを接種することが感染予防には非常に重要です。最適な対象を10~14歳としているのはそのためです。(地域によっては14歳は遅いかもしれませんね。)

積極的勧奨差し控え期間のせいで、20歳を過ぎたし性交渉も経験しました。性交開始後のキャッチアップ接種(接種機会を逃した人向けの接種)には、もう意味がないのでは?

とても大切な質問ですね。

結論を先に言います。

効果は、個人差があるが、ある程度はある場合が多いです。

 

例として、特にリスクの高いHPV16、18、31、33、35、45、52、58 で考えてみましょう。

 

HPVワクチンは、既に感染したHPV型に対する予防・治療効果は基本ありません。

 

仮に、AさんはHPV16、18には既に感染しているが、HPV31、33、35、45、52、58 にはまだ感染していない、とします。

 

この場合、9価ワクチンをキャッチアップ接種する事で、まだ感染していないHPV31、33、35、45、52、58 による今後の子宮頸がん発症の可能性を無くすことが出来ます。

しかし、既に感染しているHPV16、18による今後の子宮頸がん発症の可能性は無くなりません。

 

 

つまり、既にたくさんのHPV型に感染している人は効果が薄いし、そうでない人は効果が十分ある。という事になります。

 

通常接種において、15~26歳や27~45歳も接種対象としているのは、そのような予防効果を見込んでのことです。

では、キャッチアップ接種の前に、現在のHPV感染状況をチェックした方がいいんですか?

 

これまたとても良い質問です。

 

ワクチンの効果を見極めるための、接種前HPV感染状況チェックは必要はない(というか、費用対効果を考えるとチェックすべきではない)と言われています。

その理由はけっこう難しい説明になるのでここでは割愛しますね。

 

                                

 

                             産婦人科医 まさ

コメント

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