【HPVワクチンの予備知識】子宮頸がんとは

婦人科
著作者:starline/出典:Freepik

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)接種の積極的勧奨が、2022年4月にようやく再開されました。2013年からですので、再開に約10年もかかりました。。

しかし、マスコミの非常に偏った報道によって長期間中断されていたため、保護者の方からは未だに不安の声をよく聞きます。

ワクチンのメリットや必要性を理解してもらうためには、そもそも子宮頸がんがどういう病気であるのかを理解する必要があると思います。

 子宮頸がんは別名マザーキラーと呼ばれ、若い女性の発症・死亡が多いのが特徴です。

 

妊娠や出産を諦めなければならない女性

愛する夫・小さな子供を残して亡くなる女性

こういった不幸な患者さんやそのご家族・ご遺族を一人でも減らすために、子宮頸がんやHPVワクチンについて、多くの方に正しい知識が届いて欲しいと強く願います。

 

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1)子宮頸がんとは

子宮頸がん | 公益社団法人 日本産科婦人科学会

 上図の様に、子宮頸部と呼ばれる子宮の出口に出来るがんのことです。

 子宮がんのうち約7割を占めます。(残り3割は、子宮体部の子宮内膜にできる子宮体がんです)

 日本では、毎年約1.1万人の女性が子宮頸がんにかかり、毎年約2900人が死亡しています。また2000年以降、患者数も死亡数も増加しています。

原因は?  

 ほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。性的接触で子宮頸部に感染しますが、HPVは男性にも女性にも感染するありふれたウイルスであり、性交経験のある女性の多くは、少なくとも一度は感染するといわれています。

 感染しても90%の人では自分のもつ免疫力(自然治癒力)でウイルスが自然に排除されますが、10%の人ではHPV感染が長期間持続します。

 この10%の持続感染者の更に一部で、異形成とよばれる前がん病変を経て、数年以上をかけて子宮頸がんが発生します。

具体的な症状は?

 初期には特に症状はありません。

 一番起こりやすい症状は性器出血ですが、出血する場合は既に、今後の妊娠や出産が不可能な、進行したがんである場合がほとんどです。。

 もしなってしまっても、前がん病変である異形成や、ごく初期のがんならば、子宮の出口のみを切除(子宮頸部円錐切除術)することで、ほぼ完治可能で、今後の妊娠出産も可能です!

 

 ので、今後出産を控えている年代の方は特に予防や早期発見が大切になります。そのためには、ワクチンで予防 検診で早期発見 という2段構えでの対策が非常に有効です。

 

2)日本人女性とがん

2021年の日本では

・43万1900人の女性 ががんにかかり

・15万9700人の女性 ががんで亡くなっています。

 (国立がん研究センターがん対策情報センター)

 

がんの部位別に見てみると、子宮がんは女性の中で

・罹患数(かかった数)では28600人(7%)で第5位

・死亡数では7100人(4%)で第8位 

となっています。

注)この手の統計は、子宮頸がんと子宮体がんをまとめて「子宮がん」としてカウントしているため、子宮頸がんのみのデータではありません。ざっくり上記の7割程度が子宮頸がんだとお考えください。

3)マザーキラー

 子宮頸がんは、別名マザーキラーと呼ばれます。

 その理由は、若い女性に多いがんだからです。以前は40~50歳代が発症のピークでしたが、最近は20~30歳代の若い女性に増えてきており30歳代後半が発症のピークとなっています。

 

先に述べた通り、「全年代」女性におけるがんにおいて、子宮がんの死亡数は第8位(4%)ですが、

◎15~39歳での死亡数は第2位で15.6%

◎40~44歳での死亡数も第2位で15.6% となります。(ちなみに、ともに第1位は乳がんです)

また、上記年齢のような若い子宮がんの場合は、(7割ではなく)そのほとんどは子宮頸がんです。

 

また、がん「患者数」は、20~29歳、30~39歳ではともに子宮頸がんが第1位です。

特に、20~29歳では圧倒的1位です(2位の乳癌の2倍以上です)。

)全産婦人科医の願い

 我々は仕事柄、以下のような方をたくさん見ています。

子宮頸がんのために妊娠や出産を諦めなければならない女性、そのご家族

子宮頸がんのために愛する夫や子供を残して亡くなる女性、そのご遺族

 全ての女性に対して性交開始前にHPVワクチンを打つことが出来れば、日本人の子宮頸がんは60~70%減らすことが出来る、と言われています。

 

 残りの30~40%については、検診で早期(異形成~ごく初期のがんまでに)発見できれば、子宮頸部円錐切除術で100%近く完治できますし、その後に妊娠出産することも可能です。

 このような大切な知識がより多くの方に届き、そのような患者さん・ご家族(ご遺族)が一人でも減って欲しいな、と強く願っています。

  

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産婦人科医 まさ

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