不妊治療の前に、これだけは知っておくべし!~妊娠のメカニズム~

 不妊治療にあたり、妊娠のメカニズム(どういう順序で、何が起こって、妊娠にたどり着くのか)を理解しておくことは、とっても重要です。

 検査の意味や治療の意義の理解度・納得度に大きく影響するからです。

不妊治療に限った話ではありませんが、ご本人(不妊治療の場合はご夫婦)が理解、納得して治療を行うことは非常に重要です。

 

 

1)この記事の結論

・妊娠するためには、①排卵②受精③着床 の3stepが必須。どれがうまくいかなくても妊娠は出来ない。

・頻度は低いが、左右両側の卵管が完全に閉塞している場合は、②③が出来ないため、自力では絶対に妊娠しない(この場合、妊娠には体外受精しかない)。そのため、精液検査と同じで、子宮卵管造影は、不妊治療にはマストの検査

 

詳しく知りたい方は、以下にお進みください。

2)超重要!妊娠に必要な ”3 step”

妊娠に必要なのは、以下の3 stepです。3つすべてがうまく行かないと、妊娠は出来ません。

①排卵:卵巣の中の卵胞(卵子を育てる袋状の部屋)で卵子が発育する。充分成熟すると、卵胞が破けて中から成熟卵子がお腹の中へ飛び出す。

②受精:お腹の中へ飛び出した卵子は、子宮と卵巣をつなぐ卵管の先(卵管采)でキャッチされる。精子は、腟→子宮内→卵管内 と卵子を目指して泳いでいき、無事卵管采にいる卵子までたどり着くと、受精(精子と卵子が融合して1個の細胞になる事)して、受精卵になる。

③着床:受精卵は、育つべき場所である子宮の中に向けて、卵管采→卵管→子宮内 と移動していく。無事に子宮内までたどり着き、着床(受精卵が、子宮内膜(子宮の中にある、赤ちゃんを育てるためのベッド)に潜り込む事)できれば、晴れて妊娠が成立する。

 

その3stepにおける、卵子(黄色矢印)、精子(青矢印)、受精卵(紫矢印)の動きを表したのが、上の図になります。

    3)不妊検査の意味 ~3stepのどこに問題あり?をチェックしています~

    排卵に関連する検査:基礎体温表(BBT)、採血(排卵に関わる婦人科のホルモン、甲状腺ホルモン、血糖値 など)

    受精に関する検査:超音波(エコー)、クラミジア抗原(または抗体)、子宮卵管造影

    着床に関する検査:超音波(エコー)、子宮卵管造影

    (④その他:子宮頸部細胞診と超音波(エコー)で、妊娠前に治療すべき婦人科の病気(大きな子宮筋腫・卵巣腫瘍、子宮頸がんや子宮頸部異形成 など)を見つける)

     

    ①排卵しないと妊娠しません。もともと月経不順がある方は特に、排卵がうまくいっていない可能性があります。

    ②クラミジアや子宮内膜症は、お腹の中の癒着の原因になり得ます。癒着の程度によっては、卵管采が詰まったり(排卵しても卵子をキャッチできなくなる)、卵管の通りが悪くなり(精子が卵管采の卵子までたどり着けない)、不妊の原因となります。

    お腹の中の癒着は、自覚症状が無い場合も多々ありますので、検査しないと見つけられません。

    ③以下の場合は、①②までうまくいっても、着床が出来ず不妊となります。

    卵管の通りが悪い(受精卵が子宮内に戻ることが出来ない)

    子宮内に異物があって着床の邪魔になる(子宮筋腫、子宮内膜ポリープ)

     

     頻度は低いですが、もし左右両側の卵管が完全に閉塞している(詰まっている)場合は、②③が出来ないため、自力では絶対に妊娠しません(この場合、妊娠には体外受精がマストとなります)。

    そのため、精液検査と同じで、子宮卵管造影は、不妊治療にはマストの検査です。

    ・治療開始前 または

    ・2~3周期治療(夫婦生活のタイミング合わせ)をしても妊娠しない場合

     

    までに、子宮卵管造影を勧められない場合は、一度他の医師・病院へ相談することをご検討ください。

     

    4)不妊治療~3stepの何を治療しているのか?~

     皆さんが最も興味があるのはここではないでしょうか。

    以下の記事の「3)治療法」 に、大まかな内容が書いてありますのでご参照下さい。各々の詳細は、後日別記事で解説する予定です。

    【不妊治療】~いつから病院に行くべき?~
     自分たちで妊活を頑張ってはいるけど、なかなか妊娠しなくて。  通院を考えているんですが、...

    5)まとめ

    ・妊娠するためには、①排卵②受精③着床 の3stepが必須です。3つすべてがうまく行かないと妊娠は出来ません。

    ・精液検査と同じで、子宮卵管造影は、不妊治療にはマストの検査です。頻度は低いですが、もし左右両側の卵管が完全に閉塞している場合は、受精も着床も出来ないため、自力では絶対に妊娠しないからです。この場合、妊娠には体外受精しかありません。

     不妊治療は目まぐるしく日々進歩しており、通院の手間とお金をかければ、かなりの確率で妊娠できるようになってきています。

    検査や治療の意味を理解し、納得して治療を受けることで、その確率は更に高まるのではないかな、と思います。

     

                               産婦人科医 まさ

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