妊娠と葉酸 ~無脳症、二分脊椎予防に妊娠前(妊活中)からの内服が重要です!~

うつぶせ寝の可愛い赤ちゃん 産科
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 あるサプリを妊娠前から飲むことで、赤ちゃんに重篤な(最悪命に関わったり一生障害が残ったりする)病気が起こる確率を、グンと下げられることを知っていますか?

えー、そんな良いサプリがあるなんて知りませんでした!なんですか?

葉酸です。

1)葉酸とは

ビタミンBの一種です。DNAやRNA、たんぱく質を作る材料となります。

野菜や柑橘類、レバーなどに多く含まれます。ただし、以下の理由で、食物からの吸収にはバラつきがあります。理由は、以下の通りです。
①食物の中では「ポリグルタミン酸」として存在するが、腸で「モノグルタミン酸」に分解されて初めて身体に取り込める。その分解できる能力に、個人差があるため。
②水溶性ビタミンであるため、調理中に溶け出して損失しやすいため。

 サプリ内の合成型の葉酸(folic acid:プテロイルモノグルタミン酸)は、①②の問題を克服した、安定してかつ身体に取り込まれやすい葉酸なんです。

2)葉酸不足は何がいけないの?

妊娠初期は、神経管という赤ちゃんの脳や神経になる場所が作られる時期なので、その材料である葉酸が不足すると、赤ちゃんの神経管閉鎖障害という病気のリスクが高くなります。

にもかかわらず、前述のように、食べ物からの吸収にはバラつきがあるので、サプリメントで確実に必要な量の葉酸を摂取することが大切なんですね。

3)神経管閉鎖障害とは

人の脳と神経は、ざっくりいうと以下の様に出来上がります。もともとは、1枚の板なんですね!

①神経板(1枚の板状)が丸くなり、神経管(水道管のような管状)になる
②神経管の上下がふさがって、脳、神経になる

 

神経管閉鎖障害とは、上記の②がうまくいかない病気です。
a) 上(頭側)がうまく閉じなかった場合、無脳症や無頭蓋症になります。
b) 下(尾側)がうまく閉じなかった場合、二分脊椎や脊髄髄膜瘤になります。

a)の大半は、生後すぐに亡くなってしまいます。
b)は程度によりかなり個人差が大きいですが、生命に関わる場合もあります。程度の違いはあれ、後遺症が残るケースが大半です。

特にa)は、かなりインパクトのあるビジュアルです。ので、画像検索する場合、妊娠中の方は、まずご家族に調べてもらってから、自身も見るかどうかの判断をする事をお勧めします。

4)葉酸による神経管閉鎖障害の予防

神経管閉鎖障害が多い欧米での研究により、妊娠成立の前後に母親が十分な葉酸を摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害が大幅に減少することがわかりました。
日本での発生頻度は分娩1万回あたり5~6人で、欧米よりは少ないですが、増加傾向です。また、1)で示したように、食物からの接種効率にはムラがあります

そのため、日本でも2000年に厚生労働省から、以下の通知が出ています。

 妊娠の可能性がある女性は、妊娠の1か月以上前~妊娠3か月までは、通常の食事からの葉酸摂取に加えて、1日400μgの葉酸を栄養補助食品から摂取することが望ましい。

ただし、たくさん飲めばよいわけではありません。
過剰摂取(1日1000μg以上)による健康障害も報告されていますので注意が必要です。

5)どの葉酸がいいの?

 妊娠前からの葉酸、大切ですね。妊活始めたところなので、私も今日から飲みます!

 でも、少し調べただけでもたくさんの種類があって。どれを飲んだら良いですか?

 国内産であれば、どれも大差はないと思います。

 個人的には安いものでも問題ないと思います。

鉄、マカ、オメガ3 などは、入っているとbetterですが、必須ではないと思います。これらを含むものは、高くなりますしね。

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医療において最も重要なのは、良い治療ではなく、予防です。病気にならないことです。病気にならなければ、治療の必要がないですからね。
なので、予防の方法があるのにその病気になってしまうのはとても不幸な事だし、そういう患者さんを見るのはとても辛いです。それが未来ある赤ちゃんだと、尚更です。

先天性風疹症候群は、お母さんのワクチンで撲滅できます。
サイトメガロウィルス、トキソプラズマ症などの胎内感染も、妊婦やその家族がその病気と予防法をよく知って、注意して妊娠生活を過ごすことで予防できます。
子宮頸癌は、ワクチンで8~9割は予防できます。

そして、神経管閉鎖障害は、妊娠前から妊娠3か月までの葉酸サプリでほぼ防げます。
赤ちゃんの命、後遺症の可能性 を考えたら、サプリ代は安くないですか?

妊娠前から飲むのがbetterですが、少なくとも妊娠がわかったら、全ての女性に飲んでほしいです。また、妊活中も全ての女性に飲んでほしいです。
産婦人科で積極的に避妊(ピル、子宮内避妊リングなど)していない女性は、全員が飲む社会になったら最高だな、と個人的には思います。

産婦人科医 まさ

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