梅毒の検査と治療 ~検査とその判定がとってもわかりにくい~

考えている女性 性感染症
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今回は、先天梅毒の続編(まだ見ていなくて興味のある方は、以下のリンクからご覧ください)。

検査と結果の判読(評価)方法、治療についてです。

先天梅毒 ~梅毒の大流行から赤ちゃんを守れ!!~
   近年、梅毒患者数が男女ともに劇的に増加しています。 2022年の年間患者報告数は...

 

 検査と結果が、とても分かりにくいんですよね。

 

 できるだけわかりやすく説明したいと思いますので、より正確な説明が必要な方は、他のサイトをご参照ください。

 治療に関しては、以前は長期間(最低でも1日3回を4週間)抗菌薬を内服しなければならず、通院を自己中断する方が少なくありませんでしたが、2022年に、1回の筋肉注射で治療が可能になりました。

 

1)梅毒の検査

TPHA(TP)法 ②RPR(またはSTS)法  の組み合わせで採血検査を行います。

 ①は、梅毒の原因菌であるトレポネーマそのものの有無を調べる検査です。感染後に一度陽性になると、死ぬまで陽性のままです(わかりにくいですが、死ぬまでなおらない、というわけではありませんよ)。よって、①が陽性なら 現在進行形の梅毒か、過去に梅毒に感染していた(今は治っている) のどちらかです。

 ②は、梅毒に感染したことによって体内にできる脂質の有無を調べる検査です。梅毒以外の理由でも同じ脂質が作られることがあるので、梅毒ではないのに陽性となる(生物学的偽陽性)場合があります
主な理由は妊娠、膠原病(自己免疫疾患)、感染、癌 などです。

だったら、まぎらわしいので①だけでよくないですか?

 とてもいい質問ですね。

 ②も行うのには以下の2つの理由があります。

 特に、治療後の効果判定のために、初めから②の数値を見ておくことが重要なんです。

 1)早期発見に役立つ可能性がある: ②は、①よりも2~3週間早く陽性化する事が多い
 2)治療後の効果判定に必要:
  ①は、一度陽性化すると、半永久的に、ある一定の数値以下には低下しない
  ⓶は、治療が有効であると数値が下がりやすい

 

2)結果の見方 ~重要だがすごくわかりにくい~

感染して3~4週間ほどは、検査をしても陰性となります(=感染の超初期は、検査をしてもTPHA、RPRともに陰性になります!)
◎その後、まずRPRが陽性になります
◎そこから2~3週間遅れてTPHAが陽性になります。TPHAは、基本、一度陽性となると一生陰性化することはありません。
 
(◎しかし、近年の検査感度上昇により、RPRよりも先にTPが陽性となる場合が増えてきています。)
 
上記を踏まえて、検査結果の見方は大きく分けて以下の4種類となります。
治療が必要な場合を赤字にしてあります。
 
RPR TPHA 梅毒
陰性(-) 陰性(-) ・正常(梅毒ではない)
・感染の超初期(感染から3~4週間以内)
陽性(+) 陰性(-) ◎感染初期:RPR陽性化→TPHAが陽性化 までの2~3週間
・生物学的偽陽性(梅毒ではない)
陽性(+) 陽性(+)

・梅毒
・梅毒の感染→治癒後

陰性(-) 陽性(+)

・梅毒の感染→治癒後

◎感染初期:近年は、検査の感度が高くなっているため、RPRよりも先にTPが陽性となる場合が増えてきている

 

どこにも2つ以上の可能性があって、よくわからない

わね~

 

はい。その通りなんです。

我々も、この結果の解釈にはとっても悩むんですよ。。

 

要点は以下になるかな、と思います。

◎TPHA、RPRがともに(ー):
基本梅毒ではない。が、感染のごく初期(感染から1か月以内)の可能性もゼロではない。不安なエピソード(パートナーが梅毒と診断された、梅毒を疑う症状がある)などの場合は、3~4週間後の再検査も検討。

◎TPHA、RPRがともに(+):
基本は梅毒で治療が必要。だが、過去の感染→治癒後(治療は不要)の可能性もある。

◎TPHA(ー)、RPR(+):
感染の初期かもしれない(RPRはTPHAより2~3週間早く陽性になる)が、生物学的偽陽性(梅毒ではない)の可能性もあるため、3~4週間後の再検査が必要。

◎TPHA(+)、RPR(ー):
基本は過去の感染。ただし、近年は、検査の感度が高くなっているため、RPRよりも先にTPが陽性となる場合が増えてきているため、感染初期の可能性もあり。よって、3~4週間後の再検査がbetter。
 
 
 
 
 
 しかも、この通りにならない、非典型的なケースも珍しくないんです。。。
 

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 もうわけがわからないですよね。

 正直、医師に判定をゆだねるしかないと思います。

 

 また、判定や説明結果に理解・納得できない場合は、経験豊富な医師のsecond opinionを早めに行うことを強くお勧めします。医師によって判断が割れることも多い病気の代表ですので。

 

3)治療

 細菌感染ですので、抗菌薬による治療を行います。

 以前は、長期間(4~12週間、その後の効果判定によっては更に期間延長)にわたって1日3~4回抗菌薬を内服しなければならず、通院を自己中断する方が少なくありませんでしたが、2021年9月に、1回(晩期梅毒では3回)の筋肉注射で治療が可能になりました。

 

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                            産婦人科医 まさ

コメント

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