今回は、先天梅毒の続編(まだ見ていなくて興味のある方は、以下のリンクからご覧ください)。
検査と結果の判読(評価)方法、治療についてです。
検査と結果が、とても分かりにくいんですよね。
できるだけわかりやすく説明したいと思いますので、より正確な説明が必要な方は、他のサイトをご参照ください。
治療に関しては、以前は長期間(最低でも1日3回を4週間)抗菌薬を内服しなければならず、通院を自己中断する方が少なくありませんでしたが、2022年に、1回の筋肉注射で治療が可能になりました。
1)梅毒の検査
①TPHA(TP)法 ②RPR(またはSTS)法 の組み合わせで採血検査を行います。
①は、梅毒の原因菌であるトレポネーマそのものの有無を調べる検査です。感染後に一度陽性になると、死ぬまで陽性のままです(わかりにくいですが、死ぬまでなおらない、というわけではありませんよ)。よって、①が陽性なら 現在進行形の梅毒か、過去に梅毒に感染していた(今は治っている) のどちらかです。
だったら、まぎらわしいので①だけでよくないですか?
とてもいい質問ですね。
②も行うのには以下の2つの理由があります。
特に、治療後の効果判定のために、初めから②の数値を見ておくことが重要なんです。
2)結果の見方 ~重要だがすごくわかりにくい~
RPR | TPHA | 梅毒 |
陰性(-) | 陰性(-) | ・正常(梅毒ではない) ・感染の超初期(感染から3~4週間以内) |
陽性(+) | 陰性(-) | ◎感染初期:RPR陽性化→TPHAが陽性化 までの2~3週間 ・生物学的偽陽性(梅毒ではない) |
陽性(+) | 陽性(+) |
・梅毒 |
陰性(-) | 陽性(+) |
・梅毒の感染→治癒後 ◎感染初期:近年は、検査の感度が高くなっているため、RPRよりも先にTPが陽性となる場合が増えてきている |
どこにも2つ以上の可能性があって、よくわからない
わね~
はい。その通りなんです。
我々も、この結果の解釈にはとっても悩むんですよ。。
要点は以下になるかな、と思います。
基本梅毒ではない。が、感染のごく初期(感染から1か月以内)の可能性もゼロではない。不安なエピソード(パートナーが梅毒と診断された、梅毒を疑う症状がある)などの場合は、3~4週間後の再検査も検討。
◎TPHA、RPRがともに(+):
基本は梅毒で治療が必要。だが、過去の感染→治癒後(治療は不要)の可能性もある。
◎TPHA(ー)、RPR(+):
感染の初期かもしれない(RPRはTPHAより2~3週間早く陽性になる)が、生物学的偽陽性(梅毒ではない)の可能性もあるため、3~4週間後の再検査が必要。
◎TPHA(+)、RPR(ー):
基本は過去の感染。ただし、近年は、検査の感度が高くなっているため、RPRよりも先にTPが陽性となる場合が増えてきているため、感染初期の可能性もあり。よって、3~4週間後の再検査がbetter。
もうわけがわからないですよね。
正直、医師に判定をゆだねるしかないと思います。
また、判定や説明結果に理解・納得できない場合は、経験豊富な医師のsecond opinionを早めに行うことを強くお勧めします。医師によって判断が割れることも多い病気の代表ですので。
3)治療
細菌感染ですので、抗菌薬による治療を行います。
以前は、長期間(4~12週間、その後の効果判定によっては更に期間延長)にわたって1日3~4回抗菌薬を内服しなければならず、通院を自己中断する方が少なくありませんでしたが、2021年9月に、1回(晩期梅毒では3回)の筋肉注射で治療が可能になりました。
産婦人科医 まさ
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