ブライダルチェック~何を検査したらいいですか?~

婦人科
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来月入籍することになりました。

結婚後はすぐにでも妊活を開始したいと思っています。

結婚や妊活開始前にしておくべき検査があれば知りたいです。

結婚おめでとうございます。

妊活開始前に婦人科を受診するのはとても良い事です。

妊娠前にわかっておいた方が良い(場合によっては妊娠前に治療を済ませた方が良い)異常を見つけるきっかけになりますからね。

その目的は大きく以下の2点です。

①妊娠や出産に影響を及ぼす可能性のある婦人科疾患(子宮筋腫や卵巣腫瘍、子宮頸癌など)の早期発見

②胎児感染も含め、妊娠経過に悪影響を及ぼす可能性のある感染症の早期発見、感染リスクの把握(抗体の有無確認)

 

ブライダルチェックとして検査内容や金額が設定されている施設も多いです。施設間で差はありますが、

・金額は1~3万円前後

・検査項目は超音波検査、子宮頸癌検査、感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、クラミジア、風疹 等)など

である場合がほとんどです。

 

 

 

そして、検査項目に含まれていないことが多いのですが、個人的にはトキソプラズマIgG抗体の追加を強くお勧めします。

また、感染流行期であるため、伝染性紅斑(リンゴ病)の原因ウイルスである、パルボウイルスB19IgG抗体の追加も強くお勧めします。

 

以前はサイトメガロウイルスのIgG抗体検査も強くお勧めしていましたが、再感染や再活性化による胎児感染もある事がわかっていますので、現在は必須ではないと考えています。

1)ブライダルチェックはなぜ必要?

前述の通り、目的は主に以下の2点です。

1)妊娠や出産に影響を及ぼす可能性のある婦人科疾患(子宮筋腫や卵巣腫瘍、子宮頸部異形成など)の早期発見

2)胎児感染も含め、妊娠経過に悪影響を及ぼす可能性のある感染症の早期発見、妊娠中の感染リスクの把握(抗体の有無確認)

2)超音波(エコー)、子宮頸部細胞診(子宮頸がん検査)

・子宮筋腫:大きい場合や多発(たくさんある)の場合は、早産、子宮内胎児発育遅延、分娩障害(→帝王切開が必要となるが、大変な手術になる場合が多い)などのリスクが高くなるため、妊娠前に治療(筋腫摘出)を勧める事があります。

・卵巣腫瘍:大きい場合、捻転のリスクがあります。その場合緊急手術が必要ですが、妊娠中の手術は麻酔薬の胎児への影響、早産などのリスクがあります。また、妊娠により子宮が大きくなると卵巣の観察が困難になるため、妊娠中は腫瘍の変化(増大、最悪癌化など)に気づきにくいです。よって、やはり妊娠前に手術(腫瘍摘出、卵巣摘出など)を勧める事があります。

・子宮頸がん:子宮頸がんの3%は、妊娠中に見つかると言われています。また、妊婦が子宮頸がんと診断される頻度は、妊婦1万人あたり約1~5人と言われています。

その場合、治療が非常に悩ましいものとなります。初回妊婦健診(妊娠10~12週頃)で、全員が公費負担(無料)で子宮頸癌検査を受けられますが、妊娠前に見つけて必要なら治療を済ませた方が良い(前がん病変である異形成や、ごく初期のがんであれば、子宮頸部円錐切除術で完治できるため、その後の妊娠出産が可能です)のは、言うまでもありません。

超音波検査と子宮頸癌検査で、「妊娠前に」精密検査や治療が必要な婦人科の病気が無いかどうか、をチェックするわけですね。

3)感染症検査

・B型肝炎、C型肝炎(採血):何より内科での精査、加療が必要となります。産科的には、母子感染予防策が必要となる場合があります(B型肝炎では、産後は新生児に対して全例で予防策を取ります)。

・梅毒(採血):妊娠中に感染すると胎内感染→先天梅毒のリスクがあります。近年大流行中ですが、症状が多彩なため、診断が非常に難しく、採血してみないと分からないケースが多いです。

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・風疹抗体(採血):妊娠20週までに妊婦が風疹に感染すると、先天性風疹症候群により、胎児に悪影響(視力障害、聴力障害、心臓疾患)が起こり得ます。抗体が無い人(HI8未満)や、有るけど抗体価が低い人(HI8倍、16倍)は、上記の予防のため、妊活開始前に風疹(または麻疹風疹)ワクチン接種を推奨しています。その場合は2か月間の避妊が必要です。

・クラミジア(内診):産道感染により、新生児の結膜炎や肺炎が起こり得ます。また、骨盤内癒着による不妊の原因になり得ます。

 

4)まさが個人的に強くお勧めする追加検査

・トキソプラズマIgG抗体(採血)

妊婦が感染すると、胎児に様々な障害(視力障害、精神発達遅延、運動発達遅延 等)が起こり得ます。日常行為(食事、ガーデニング等)が感染原因となり得ます。

日本では妊婦の6%しか抗体を持っていないため、妊娠中初感染のリスクがある妊婦がほとんどです。ワクチンが無いため、正しい知識を身につけた上で、感染予防を行うしか予防策はありません。また、もし抗体を持っていれば、感染の心配が無いため安心して過ごすことが出来ます。

詳細を知りたい方は、は以下のサイトをご参照下さい。

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・パルボウイルスB19IgG抗体(リンゴ病=伝染性紅斑)(採血)

妊婦が感染すると、胎児の貧血が起こり得ます。重症では胎児水腫、最重症では胎児死亡も起こり得ます。

非常に感染拡大しやすい病気ですが、日本では妊婦の50%は既に抗体を持っているため感染の心配がありません。

詳細を知りたい方は、は以下のサイトをご参照下さい。

妊婦とリンゴ病 ~胎児が貧血になる可能性があります~
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5)サイトメガロウイルスIgG抗体も検査すべき?

現在日本で最も高頻度でおこる周産期感染症であるため、以前はサイトメガロウイルス(CMV)IgG抗体検査も強くお勧めしていました。

どの感染症であっても、IgG抗体陽性であれば、基本感染の心配は無く、それは妊婦であっても同様です。しかも、日本では、7割の妊婦は既にCMVIgG抗体を持っています。

しかし、近年の大規模研究で、CMVに関しては、IgG陽性であっても、再感染や再活性化により胎児への悪影響が起こり得る(CMV特有の特徴)ことがわかってきました。

つまり、CMVに関しては、IgG抗体の有無に関わらず、妊活中の方や妊婦さんは、全員感染予防を行う必要があります。

そのため、上記の啓蒙をしっかりと行ったうえで、ブライダルチェックでのCMVIgG抗体検査は、私個人は現在はお勧めしていません。

詳細を知りたい方は、以下のサイトをご参照下さい。

サイトメガロウイルスの母子感染~上のお子さんがいる方は要注意!~
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6)まとめ

「妊娠前にわかっていれば」と思う状況の妊婦さんは、残念ながら時々いらっしゃいます。

それを回避するためにも、妊活開始前や結婚前には、是非婦人科で検査を行いましょう。

妊娠した時の下見のつもりで、気軽に受診してみてください。

 

                           産婦人科医 まさ

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