
結論:
妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性は、妊娠前から妊娠初期にかけて、通常の食事に加えて葉酸400μg/日をサプリメントなどから摂取することが望ましいとされています。赤ちゃんの神経管閉鎖障害(二分脊椎、無脳症など)のリスク低減に役立つからです。
特に重要なのは、妊娠してからではなく「妊娠前から」葉酸を摂取しておくことです。
「妊娠を考え始めたら葉酸サプリを飲んだほうがいい」と聞いたことがある方も少なくないと思います。この記事では、妊活中や妊娠中の方に知っておいてほしい、
- いつから飲めばいい?
- そもそもなぜ葉酸サプリが必要?
- 妊娠してから飲み始めてももう遅い?
- 1日どのくらい必要?食事だけでは不充分?
- 葉酸サプリなら何でもいい?
のような、妊娠と葉酸サプリについての大切なポイントを、産婦人科専門医がわかりやすく解説します。
目次
1)葉酸はいつから飲む?
最も大切なのは、妊娠を考え始めた時点から葉酸を摂ることです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、
妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の女性は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のため、通常の食品以外から葉酸400μg/日を摂取することが望ましい
とされています。つまり、
「妊娠がわかってから飲めばいい」のではなく、「妊娠する可能性がある時期から飲んでおく」ことが重要 ということです。
神経管は妊娠のかなり早い時期に形成されるため、妊娠に気づいた時には神経管の形成に重要な時期を過ぎていることもあるからです。
2)そもそも葉酸とは?
ビタミンB群の一種で、細胞が増殖するときや、DNA・RNAを合成する時などに必要な栄養素です。そのため、妊娠(初期)の赤ちゃんの発育にも重要な役割を果たします。
葉酸には、①食品中に含まれる「食事性葉酸」と、②サプリメントなどに使用される「合成型の葉酸(folic acid)」があります。
①は野菜や柑橘類、レバーなどに多く含まれますが、吸収が不安定な場合もあります。
一方で、②は比較的安定して吸収されることが分かっています。
3)なぜ葉酸が必要(妊婦の葉酸不足は何が問題)?
妊娠初期は、「神経管」という赤ちゃんの脳や神経になる場所が作られる時期なので、その材料である葉酸が不足すると、赤ちゃんの神経管閉鎖障害(二分脊椎、無脳症など)という病気のリスクが高くなってしまうんです。

妊娠初期は、「神経管」という赤ちゃんの脳や神経になる場所が作られる時期なので、その材料である葉酸不足は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害(二分脊椎、無脳症など)の発症リスクを高めてしまうんです。

食事から葉酸を摂取することももちろん大切ですが、食事からの摂取は不安定なため、サプリメント等で400μg/日の葉酸を確実に葉酸を補うことが推奨されています。
妊娠前~妊娠初期の、サプリメントなどに含まれる葉酸(folic acid)の適量摂取と神経管閉鎖障害のリスク低減については、強いエビデンスがあります。
・無脳症の大半は、生後すぐに亡くなってしまいます。
・二分脊椎は、その程度によりかなり個人差が大きいですが、生命に関わる場合もあります。程度の違いはあれ、後遺症(下肢の運動障害や排尿・排便障害など)が残るケースが多いです。

無脳症は、かなりインパクトのあるビジュアルですので、もし妊娠中で画像検索をする場合は、まずご家族に調べてもらってからご自身も見るかどうかを判断する事をお勧めします。
4)1日の必要量は? 食事に気を付ければOk?
妊活中、妊娠の可能性がある、妊娠初期 の女性では、
・葉酸を1日あたり400μg
・通常の食品以外から
摂取することが推奨されています。
ここで大切なのは、(食事から葉酸を摂取することももちろん大切ですが、)神経管閉鎖障害のリスク低減を目的とした葉酸の摂取については、通常の食品以外から400μg/日を補うことが推奨されている点です。

妊娠前~妊娠初期の、サプリメントなどに含まれる葉酸(folic acid)の適量接種と神経管閉鎖障害のリスク低減については、充分なエビデンスがあります。
ただし、葉酸は多く摂れば摂るほどよいわけではありません。サプリメントなどを複数併用すると、知らないうちに摂取量が多くなることもあるため、表示されている摂取量を確認しましょう。
5)妊娠してから飲み始めても遅い?

妊娠に気づく前に葉酸を飲んでいませんでした。もう遅いですか?
これは、外来で非常に良くある質問です。

妊娠に気づいてからでも、葉酸を摂取することには意味があります。
妊娠期間を通じての内服は
・貧血予防に役立つ
・胎盤関連のトラブル(常位胎盤早期剥離など)回避に役立つ可能性がある
と言われているからです。

ただし、神経管の形成は妊娠のかなり早い時期に起こるため、神経管閉鎖障害のリスク低減という目的では、「妊娠前から」葉酸を摂取しておくことが重要です。
したがって、葉酸に関しては、「妊娠する可能性があるなら今から摂る」という考え方がおすすめです。
しかし、妊娠判明時に葉酸を飲んでいなかった方も、必要以上に自分を責める必要はありません。妊娠に気づいた時点で産婦人科医に相談し、葉酸を含めた栄養管理を始めましょう。
6)葉酸サプリは何を選べばいい?
葉酸サプリを選ぶ際には、まず1日量を確認してください。妊娠を計画している女性などでは、神経管閉鎖障害のリスク低減を目的として、通常の食品以外から葉酸400μg/日を摂取することが望ましいとされています。
高価な商品だから効果が高い、というわけではありません。複数のサプリメントを併用すると葉酸などの栄養素が重複することもありますので、栄養成分表示を確認することをおすすめします。
7)葉酸をたくさん飲めば、さらに効果がある?
これも注意が必要です。
神経管閉鎖障害のリスク低減を目的として、一般の妊娠を計画している女性にすすめられている量は400μg/日です。過剰摂取による健康障害の報告もありますので、自己判断での過剰摂取はするべきではありません。
8)産婦人科専門医から、妊娠を考えている方へ
妊娠を考えている方にとって、葉酸は「妊娠してから考えるもの」ではなく、「妊娠する前から準備しておくもの」と考えてください。
妊娠を希望しているのであれば、葉酸400μg/日をサプリメントなどから摂取することを習慣にする。これが、妊娠前にできる大切な準備の一つです。
一方で、葉酸だけを摂っていれば十分というわけでもありません。
妊娠を考えたら、
・葉酸 ・風疹抗体 ・持病や服用薬 ・喫煙や飲酒 ・体重 ・必要な予防接種
などについても、一度確認しておくとよいでしょう。
「妊娠してから産婦人科に行く」のではなく、妊娠する前から産婦人科を上手に利用することをおすすめします。
9)まとめ
妊娠と葉酸について、重要なポイントをまとめます。
- 妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性は、葉酸400μg/日を通常の食品以外から摂取することが望ましい
- 神経管は妊娠の非常に早い時期に形成されるため、妊娠前からの摂取が重要
- 妊娠前からの適量の葉酸は神経管閉鎖障害のリスクを大幅に低下させるが、完全に予防できるわけではない
- 葉酸は多く摂れば摂るほど良いわけではない
- 過去に神経管閉鎖障害のある妊娠を経験した方などは、自己判断せず妊娠前に産婦人科医へ相談する(再発予防の目的で、妊娠前からより高用量の葉酸内服を勧められる場合がある)

妊娠を考え始めたら、「いつか妊娠するかもしれない」段階から葉酸を意識してみてください。
赤ちゃんの発育にとって大切な時期は、妊娠に気づくより前から始まっています。

医療で最も重要なのは、治療ではなく予防です。病気にならなければ、治療の必要がないですからね。
なので、予防法があるのにその病気になってしまうのはとても不幸だし、そういう患者さんを見るのはとても辛いです。それが未来ある赤ちゃんだと尚更です。
神経管閉鎖障害は、妊娠前から妊娠初期の葉酸サプリで防げる可能性が大幅に高まります。赤ちゃんの命や後遺症の可能性を考えたらサプリ代は高くない、と個人的には強く思います。
産婦人科専門医 まさ
【参考文献】
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
[2] 厚生労働省「葉酸とサプリメント―神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-05-002
[3] CDC, Folic Acid: Sources and RecommendedIntake,2026. https://www.cdc.gov/folic-acid/about/intake-and-sources.html
[4] CDC, Neural Tube Defects, 2025. https://www.cdc.gov/birth-defects/about/neural-tube-defects.html
[5] U.S. Preventive Services Task Force, Folic Acid Supplementation to Prevent Neural Tube Defects: Preventive Medication,2023. https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2807739


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