
結論:
妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性は、妊娠前から妊娠初期にかけて、通常の食事に加えて葉酸400μg/日をサプリメントなどから摂取することが望ましいとされています。赤ちゃんの神経管閉鎖障害(二分脊椎、無脳症など)のリスク低減に役立つからです。
特に重要なのは、妊娠してからではなく「妊娠前から」葉酸を摂取しておくことです。

個人的には、妊娠前~妊娠中の葉酸サプリ摂取については、以下の様に指導しています。
・妊娠の少なくとも1か月以上前から妊娠10~12週まではマスト(神経管閉鎖障害の予防効果あり。)
・以後も妊娠30週くらいまでは継続がbetter(貧血予防効果あり。常位胎盤早期剥離を減らす可能性あり。)
・それ以降は、内服しないことを推奨(妊娠後期の葉酸摂取は、児の将来的な喘息リスクを高める可能性あり。)
「妊娠を考え始めたら葉酸サプリを飲んだほうがいい」と聞いたことがある方も少なくないと思います。この記事では、妊活中や妊娠中の方に知っておいてほしい、
- いつから飲めばいい?
- そもそもなぜ葉酸サプリが必要?
- 妊娠してから飲み始めてももう遅い?
- 1日どのくらい必要?食事だけでは不充分?
- 葉酸サプリなら何でもいい?
のような、妊娠と葉酸サプリについての大切なポイントを、産婦人科専門医がわかりやすく解説します。
目次
1)葉酸はいつから飲む?
最も大切なのは、妊娠を考え始めた時点から葉酸を摂ることです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、
妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の女性は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のため、通常の食品以外から葉酸400μg/日を摂取することが望ましい
とされています。つまり、
「妊娠がわかってから飲めばいい」のではなく、「妊娠する可能性がある時期から飲んでおく」ことが重要 ということです。
神経管は妊娠のかなり早い時期に形成されるため、妊娠に気づいた時には神経管の形成に重要な時期を過ぎていることもあるからです。
2)そもそも葉酸とは?
ビタミンB群の一種で、細胞が増殖するときや、DNA・RNAを合成する時などに必要な栄養素です。そのため、妊娠(初期)の赤ちゃんの発育にも重要な役割を果たします。
葉酸には、①食品中に含まれる「食事性葉酸」と、②サプリメントなどに使用される「合成型の葉酸(folic acid)」があります。
①は野菜や柑橘類、レバーなどに多く含まれますが、吸収が不安定な場合もあります。
一方で、②は比較的安定して吸収されることが分かっています。
3)なぜ葉酸が必要(妊婦の葉酸不足は何が問題)?

妊娠初期は、「神経管」という赤ちゃんの脳や神経になる場所が作られる時期なので、その材料である葉酸不足は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害(二分脊椎、無脳症など)の発症リスクを高めてしまうんです。
・無脳症の大半は、生後すぐに亡くなってしまいます。
・二分脊椎は、その程度によりかなり個人差が大きいですが、生命に関わる場合もあります。程度の違いはあれ、後遺症(下肢の運動障害や排尿・排便障害など)が残るケースが多いです。

無脳症はかなりインパクトのあるビジュアルですので、もし妊娠中に画像を検索する場合はまずご家族が行い、それからご自身も見るかどうか判断する事をお勧めします。
4)1日の必要量は? 食事に気を付ければOk?

これまで述べたように、妊活中や妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の女性では、神経管閉鎖障害予防のために
・葉酸を1日あたり400μg
・通常の食品以外から
摂取することが推奨されています。

ここで大切なのは、通常の食品以外からの摂取が推奨されている点です。食事からの摂取ももちろん大切ですが、食事からの摂取・吸収は不安定な場合もあるためです。

妊娠前~妊娠初期の、サプリメントなどに含まれる葉酸(folic acid)の適量接種と神経管閉鎖障害のリスク低減については、強いエビデンスがあります。
5)妊娠してから飲み始めても遅い?

妊娠に気づく前に葉酸を飲んでいませんでした。もう遅いですか?
これは、外来で非常に良くある質問です。

妊娠に気づいてからでも、葉酸を摂取することには意味があります。
妊娠中期までの内服は
・貧血予防に役立つ
・胎盤関連のトラブル(常位胎盤早期剥離など)回避に役立つ可能性がある
と言われているからです。
(妊娠後期の内服は、児の将来的な喘息リスクを高める可能性が指摘されており、個人的には勧めていませんが、絶対にダメではないと思います)

ただし、神経管の形成は妊娠のかなり早い時期に起こるため、神経管閉鎖障害のリスク低減という目的では、「妊娠前から」葉酸を摂取しておくことが重要です。
したがって、葉酸に関しては、「妊娠する可能性があるなら今から摂る」という考え方がおすすめです。
妊娠判明時に葉酸を飲んでいなかった方も、必自分を責める必要はありません。妊娠に気づいた時点で産婦人科医に相談し、葉酸を含めた栄養管理を始めましょう。
6)葉酸サプリは何を選べばいい?

種類がたくさんあるし、値段も全然違うし。
どれを摂取したらいいのかわかりません。
葉酸サプリを選ぶ際には、まず1日量を確認してください。神経管閉鎖障害のリスク低減目的では、通常の食品以外から葉酸400μg/日を摂取することが推奨されているため、この量を確実に摂取できることが最重要です。
高価な商品だから効果が高い、というわけではありません。妊活をはじめてもなかなか妊娠せず、葉酸サプリが長期間必要となる場合もありうるので、もし長期間になっても継続できそうなものを選ぶのが良いと思います。
7)葉酸をたくさん飲めば、さらに効果がある?
そんなことはありません。
推奨される葉酸摂取量は400μg/日です。過剰摂取による健康障害の報告もあるため、自己判断での過剰摂取は控えましょう。
また、サプリメントを複数併用していると、気づかずに過剰摂取してしまっている場合もあるため注意が必要です。表示されている成分表・摂取量をしっかり確認しましょう。
8)産婦人科専門医から、妊娠を考えている方へ
妊娠を考えている方にとって、葉酸は「妊娠してから考えるもの」ではなく、「妊娠する前から準備しておくもの」です。
妊娠を希望しているのであれば、葉酸400μg/日をサプリメントから摂取することを習慣にする。これが、妊娠前にできる大切な準備の一つです。
一方で、葉酸だけを摂っていれば十分というわけでもありません。
妊娠を考えたら、
・葉酸 ・風疹抗体 ・持病や服用薬 ・喫煙や飲酒 ・体重 ・必要な予防接種
などについても、一度確認しておくとよいでしょう。

「妊娠してから産婦人科に行く」のではなく、妊娠する前から産婦人科を上手に利用することをおすすめします。
この点に関しては、以下の記事が参考になります。興味のある方はご参照ください。
9)まとめ
妊娠と葉酸について、重要なポイントをまとめます。
- 妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性は、葉酸400μg/日を通常の食品以外から摂取することが望ましい
- 神経管は妊娠の非常に早い時期に形成されるため、妊娠前からの摂取が重要
- 妊娠前からの適量の葉酸摂取は神経管閉鎖障害のリスクを大幅に低下させるが、完全に予防できるわけではない
- 葉酸は多く摂れば摂るほど良いわけではない
- 過去に神経管閉鎖障害のある妊娠を経験した方などは、自己判断せず妊娠前に産婦人科医へ相談する(再発予防の目的で、妊娠前からより高用量の葉酸内服を勧められる場合がある)

妊娠を考え始めたら、「いつか妊娠するかもしれない」段階から葉酸を意識してみてください。
赤ちゃんの発育にとって大切な時期は、妊娠に気づくより前から始まっています。

医療で最も重要なのは、治療ではなく予防です。病気にならなければ、治療の必要がないですからね。
なので、予防法があるのにその病気になってしまうのはとても不幸だし、そういう患者さんを見るのはとても辛いです。それが未来ある赤ちゃんだと尚更です。
神経管閉鎖障害は、妊娠前から妊娠初期の葉酸サプリで防げる可能性が大幅に高まります。
赤ちゃんの命や後遺症の可能性を考えたらサプリ代は高くない、と個人的には強く思います。
産婦人科専門医 まさ
【参考文献】
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
[2] 厚生労働省「葉酸とサプリメント―神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-05-002
[3] CDC, Folic Acid: Sources and RecommendedIntake,2026. https://www.cdc.gov/folic-acid/about/intake-and-sources.html
[4] CDC, Neural Tube Defects, 2025. https://www.cdc.gov/birth-defects/about/neural-tube-defects.html
[5] U.S. Preventive Services Task Force, Folic Acid Supplementation to Prevent Neural Tube Defects: Preventive Medication,2023. https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2807739
※ 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。


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